地震を経験した被災者こそ、地震の専門家だと思う。
  • 災害発生前
  • デザイン
  • 寄藤文平
  • アートディレクター
  • NPO法人プラス・アーツ
  • 地震ITSUMOプロジェクト

2011年3月に立ち上げた地震ITSUMOのウェブサイト

専門家の視点ではなく、
被災者の声から地震を考える。

NPO法人プラス・アーツが編集し、寄藤文平氏がイラストを担当した『地震イツモノート』の初版は2007年。東日本大震災後には、多くの地震関連本が出版されたが、『地震イツモノート』は地震の専門家からの視点ではなく、阪神・淡路大震災の被災者167人のヒアリングを元にして、それぞれの気持ちや工夫をまとめている点が、他の本とは異なっている。

大地震が来たら身動きできない、報道のヘリコプターの音で助けを呼ぶ声も聞こえない、倒壊した家から人を救助するのにジャッキやバールが役に立ったなど、被災した人の話からしかうかがえないリアルな災害の姿が浮かんでくる。

「被災者の声」のリサーチから教訓を伝えていくという同法人の姿勢は、「イザ!カエルキャラバン!」の開発時から変わらず、ここで得た情報がその後の「地震ITSUMO」の活動のベースとなっている。

  • 2011年8月には親子で読める地震本『親子のための地震イツモノート』も出版されている。

企業と蓄積した防災情報を、
みんなが使える情報に。

2011年3月末に、寄藤氏と同法人は、東日本大震災の被災者のために、防災関連情報のオープンソースサイト「地震ITSUMO.COM」を立ち上げた。

『地震イツモノート』の「地震とその直後」及び「避難生活」の章の内容と、2007年から協同で行っている東京ガス株式会社の社員向け防災啓発プロジェクト「SAVE YOURSELF」で発信してきた防災の知識や技に関する情報をA4サイズのシートに編集し直し、無料でダウンロードして使えるような仕様になっている。

特に「SAVE YOURSELF」からの情報は、『地震イツモノート』の情報を元に、6年の間、同企業とともに、専門家などへリサーチを重ねてきたものだけに、「耐震」「家具転倒防止」「応急手当」「防災グッズ」「緊急連絡、情報収集」「避難」といった幅広い分野をカバーし、情報源が確かな、充実したわかりやすい内容となっている。

  • 「地震ITSUMO.COM」からダウンロード・印刷できる「マニュアル」は33枚にも及ぶ。

親しみやすいイラストで、
社会的に広がる活動へ。

東日本大震災後には、社会の防災意識の高まりを受け、CSR(企業の社会的責任)や企業ブランド価値の一環として「防災」を発信する企業が多くなり、同法人は、東京ガスの他6社とコラボレーションし、「地震ITSUMO」の情報を各企業にあわせてアレンジして、各企業の顧客向け防災啓発ツールの制作や、社員・顧客向けの防災講座などを実施している。

そのコラボレーションしている企業は、インフラ企業や不動産会社など業種はさまざまだ。

同法人理事長の永田宏和氏は、企業が「地震ITSUMOプロジェクト」に高い関心を寄せる理由に、寄藤氏の描くイラストの存在をあげる。

とっつきにくい・継続しにくい防災を、日常に溶け込ませる身近さと親しみやすさに変えていく強いコミュニケーション力をもった寄藤氏のイラストを軸に、「地震ITSUMOプロジェクト」は、他企業間で同じ防災の知識や技の情報を共有し、それぞれのステークホルダーの防災力を高めるという、かつてない、社会的な広がりを持った展開を見せている。

 

  • 各企業に広まる「防災マニュアルブック&災害時の連絡かガイドブック」。
  • 無印良品の防災プロモーション「私の備え。いつものもしも。」にも企画協力している。
  • タイ・バンコクでは、2012年9月〜2013年1月まで「地震ITSUMO in バンコク」を開催。